- あらすじ
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主人公のキラキラOL・高見翔子は最近出会った外コン勤務、巻 マリ男に恋をしている。
でも翔子は自他ともに認める「恋愛依存症」男性への痛い行動で付き合っても長く続かない。
友人のみちかの勧めで歌舞伎町のホストクラブに始めて行った翔子。
そこで出会ったホスト「ケン」にマリくんとの恋仲を相談している。忙しいケンくんに対して翔子の恋愛体質が爆発。
連絡が遅いのすら許せなくなり、いきなりの店の来店でアフターをねだる。
だがケンくんの答えはNO。
いてもたっても居られずケンくんには黙って、お店を逃げる様に帰った翔子だったが…。
◆詳しい人物紹介の記事はコチラ→どうしたグルダン?!【新連載告知】
◆これまでのお話はこちら→【第1話】はじめてのホストクラブ物語
◆これまでのお話はこちら→【第2話】ホストクラブ行き方編
◆これまでのお話はこちら→【第3話】歌舞伎町ホストクラブ初回編
◆これまでのお話はこちら→【第4話】ホストクラブで初指名編
◆これまでのお話はこちら→【第5話】ホストクラブ初めてのシャンパン編
◆これまでのお話はこちら→【第6話】初めての同伴編
◆これまでのお話はこちら→【第7話】初めてのケンカ編
第8話「仲直りシャンパンと初めてのアフター」
『なんで勝手に帰っちゃったの?』
お店を出てしばらくして、ケンくんからラインが来ていた。
そのラインはシカトした。
私は帰りのタクシーの中で考えていた。
なんだか心にぽっかり穴が空いたような空虚感が自分の胸に漂っているのが分かる。
この虚しさを誰かに埋めて欲しかったけど、こんな惨めな姿を誰かに見せたくなんかない。
私はラインを眺めながらこの気持ちを伝える相手を探した。
だが、私のこの虚しさを埋めてくれる人はマリくんしか見つからなかった。
『マリくん、今度の金曜日って空いてる?』
でも今まで私からマリくんを誘ったことは何度かあるが、私の誘いにマリくんからOKが来た事は今までに一度もない。
きっと今回も断られるのだろう。
分かっているけど先々の約束が欲しかったのだ。
その約束の時間までは私の心がマリくんで満たせるからだ。
もちろん既読すらつかないけど、マリくん宛てのラインを送っただけで不思議と気持ちが落ち着いた気がする。
いつも簡単に私を元気にさせるから、マリくんは魔法使いか何かなのではないかとたまに思う。
まぁ魔法使いならもう少し私との関係をうまく行かせられないものかとは思うが…。
次の日の朝、ケンくんからラインは来ていたが開く気になれず既読にすることなく放置した。
今朝は目もパンパンに腫れているし、顔も浮腫んでいた為こんなブスな顔では出かけられないから仕事はお休みした。
だがそんな鬱蒼とした気持ちも昼過ぎくらいには収まりを見せてきた。
気持ちが落ち着いてきた私はケンくんのラインを開封した。
そこにはケンくんの気持ちが詰まった文章があった。
『昨日は来てくれてありがとう、顔見られて元気がでたよ。昨日は俺の事もきちんと理解して欲しくて翔子ちゃんにはきちんと話したつもりでいる。お互いもっと理解をして一緒に居られたらいいなと俺は思うから。』
今こうやって冷静になって考えてみるとケンくんの言っていた事はすごく分かる。
昨日だってケンくんの言っている事が正論だからイライラしてしまったのもある。
このままケンカしても仕方ないし、そもそも私は元来とても仕事に理解のあるいい女である事を思い出したのだ。
私は他とは違う、一線を画したいい女なのだ。
そう、菩薩のような…agape
agape
友也先生がたまに使う神のお言葉。そもそも神が罪人を許すのが…(略)みたいな宗教上の意味のある言葉みたいです。
そんな悟りを開きかけていた時にまた携帯が鳴った。
その相手はマリくんからだった。そういえば今日は頭がいっぱいになりすぎてマリくんに朝の定例ラインを送り損ねていた。
『今度の金曜なら大丈夫だよ!前に翔子と行った銀座のビーガン料理のお店行きたいな。』
まさかのOKの返事に驚いた。
私とマリくんの関係が以前と変化したのを改めて実感した。
全然ビーガン料理は食べたくないけど。
以前、意識を高く見せたいだけの為にビーガン料理にも興味があると嘘をついたのを思い出した。
でも雰囲気がすごくいいお店だった事だけは覚えている。
でもこのマリくんからOKの連絡が来たのもケンくんのお陰なのは私も分かっていた。
やっぱりケンくんの効果はとっても偉大だった事には間違いないのだ。
ケンくんと仲直りしなくては。
そう思って私はケンくんに連絡をした。
『私も昨日は悪かったと思っています。もっとケンくんの仕事の事を理解するべきだったんだと思う。きちんと仲直りしたいな。今日遊びにいくね。』
私は考えまくった文章をケンくんに送った。
いろいろ言いたい事はあるけどラインでは多くは語らないでいようと決め、手短な文章にした。
送る頃にはテレビも気が付いたらミヤネ屋からnews everyに変わっていた。
ケンくんに言われてから連日お店に行くのは避けていたが、今日はきちんと仲直りするためにも行かないとと思った私はケンくんのお店に行く準備を始めた。
◆◆◆◆◆
お店に入って席に座ると、すぐにケンくんがやってきた。
「翔子ちゃんおはよう。今日はゆっくり話したいと思ってるんだよね。」
そう言って私の隣に座り少し神妙な表情をした。
いざ仲直りしようと思っていても、こうやって面と向かってしまうと何て話したらいいのか少し戸惑ってしまう。
でも今日は、昨日の事を謝ろうと決めてきた。
最初の言葉を探している時に、ケンくんが先に話だした。
「昨日は翔子ちゃんには、俺の仕事の事分かって欲しくっていろいろ言ったよ。それはきちんと伝えておかなきゃいけない事だと思ったし、理解しておいてほしいと思ったから伝えた。でも昨日はお客様もいっぱい居てちょっと飲みすぎた事もあって乱暴な自分よがりな言い方になっちゃってたかもしれない。もっと翔子ちゃんと話しをきちんとするべきだった…ごめんね。」
そう言われたことにびっくりした。
絶対に今日私から謝ってくると分かっていたのに、どうしてこんな優し言葉をかけてくれるのだろうか…真の菩薩はここに居ましたagape
「ううん!私こそごめんなさい。もっとケンくんの事や仕事の事を理解しなくちゃいけないのに…自分の感情に任せすぎちゃった。私っていつもそうなって失敗しちゃうから…」
そう、いつだってそうだ。
私は自分の感情がいつも先行して高まってコントロールできなくなってしまう。
でも今までの男の人たちは私の気持ちが爆発すると音信不通になってしまったり、こちらから謝るといきなり態度が変わったりなどする人だらけだった。
でもケンくんは、きちんと話をしようと言ってくれた事が何よりも嬉しかった。
私は、なんて幼稚じみた事をしてしまったんだろうと思ったら申し訳なさすぎて涙が溢れてきた。
そんな泣いてる私を見ていつも冷静なケンくんが珍しく焦っていた。
「翔子ちゃん泣かないで。どうしたの?」
「こんな幼稚な私の事受け入れてくれたのにムキになった自分が申し訳なくて…、今までみんな私が感情的になったら音信不通になったり、態度が変わったりする人ばっかりだったから。ケンくんありがとう」
泣いている私の頭をケンくんはポンポンとしてくれた。
ケンくんは心だけじゃなくて手まで暖かいんだな。
私が落ち着いてお酒を飲みだしているとケンくんが少し席を離れている間、モブくんがテーブルにやってきた。
「翔子ちゃーーん!昨日は大丈夫だった?俺心配しちゃったよ!結構遅い時間だったし、ちゃんと帰れた?ケンさんと何かあった?俺でよければ相談に乗るよ」
来てお酒も飲む前に私を心配そうに見つめ、身を乗り出すように話てきた。
そうかモブくんにも昨日悪い事をしてしまったな…。
「大丈夫だよモブくん。私が言いたい事ケンくんに言いすぎちゃって。いつも自分の感情を抑えられなくなっちゃうんだよね。私ったら幼稚で重い女だよね。いつもそうやって失敗しちゃうんだ。」
そう言った私の話をモブくんは真剣に聞いてくれた。
「それは重いっていうか、翔子ちゃんが人の事を好きになる気持ちが強いからでしょ?だってどうでもいいと思う人とはケンカなんてしないじゃん?自分の良い所を重いなんて言って卑下しちゃいけないよ。」
まさか年下のモブくんにこんなに勇気づけられる事があると思ってもみなかった。
確かに、私の重いは好きという気持からやってくるのかもしれない。
「ねぇモブくん、今日も仲直りのシャンパン入れたいな。今日はコールがあるやつがいい!」
「そうですね。翔子さんの思いいっぱい伝えましょう!」
今回のシャンパンは前回のケンくんからプレゼントしてもらったシャンパンとは全然違うシャンパンで私の感謝の気持ちをいっぱい込めたものだ。
ケンくんにお金使いすぎって心配されるかもしれなくてもどうしても伝えたい気持ちなのだ。
ケンくんが戻って来たと同時に、お店が暗転してシャンパンコールが始まった。
前回は緊張でよく分からなかったが今回は他のHEAVENのホストたちの顔までしっかり見られる余裕ができた。
みんなすっかり見慣れた顔だ。
合いの手を入れる時に今回も握ってくれたケンの手がとても暖かい事に私の心はぎゅっとなった。
「ケンくんいつもありがとう。ケンくんはまるで菩薩の様ですagape」
とコールのマイクで私の気持ちを話した。
本当にケンくんに出会えてよかった。
シャンパンコールが終わった後のケンくんのかわいい笑顔にますます私の気持ちは高揚した。
「そういえば翔子ちゃん、今日はこれから時間ある?今日こそちゃんとアフターしない?」
ケンくんからの意外なお誘いに私はびっくりした。
「え!本当に?行きたい!おなかすいた!!」
そんな返答にケンくんは声を出して笑った。
本当にこの人の隣で笑っていられるのは、なんて幸せなんだろうか。
◆◆◆◆◆
ケンくんが仕事が終わるまで私はゴジラビルの近くのカフェで待つことにした。
お店を見渡すと圧倒的に女性客ばかり。
きっと他のお客さんもみんな私同様ホストのアフターを待っているのだろう。
みんな私同様に、彼女達にもそれぞれの物語がそれぞれのホストクラブで繰り広げられているのだろう。
一体どんな物語りなのか聞きたい気持ちになる。
汗をかいたグラスのミルクティーを飲み干す前にケンくんはやってきた。
「お待たせ。おいしいもの食べに行こう。」
外で見てもかわいらしい笑顔に私もつい笑顔になる。
ケンくんが連れてきてくれたのは区役所通りにほど近いイタリアンだった。
前回の誕生日の時と比べるとだいぶフラットな所だが料理は案外いける。
ケンくんは体が細いのによく食べる。
本当にうらやましい限りだ。
「そういえば今度の金曜日マリくんと会う約束したよ!今まで私から誘ってOKだった事なんてなかったのに。どんどん距離が縮まっていくの感じる。」
まさかケンくんの作戦がこんなにもうまくいくなんて思っていなかった。
マリくんと私の関係は今までと変わりつつあるのを感じる。
「ケンくんとケンカしちゃってから何か自分が暴走しちゃわないか不安で…、ここで失敗しちゃったらどうしようって不安になってきちゃうんだよね。どうしたらいいかな?」
そんな私の問いかけにケンくんは少し悩んだ。
「翔子ちゃんの気持ちがいっぱいになってきちゃったら俺の事を思い出してよ。でも俺、翔子ちゃんの事を邪見に扱うのは本当に許せないから、もしもマリくんに嫌な思いさせられたらそれもきちんと伝えなくちゃダメだよ?」
確かにケンくんが居てくれるのが私の心強さになっていたのは確かだ。
でもそんなにうまくいくだろうか…。
まだ不安そうな表情をしている私の手をケンくんが強く握り、しっかり私の目を見つめた。
「大丈夫だよ翔子ちゃん。俺がついてるから。絶対に落ち着いて行けるから!ちゃんとマリくんとのデート楽しんでおいで。」
この人の言葉にはなんて勇気が出るのだろうか。
自分がとても強い人間になった気がする。
私は笑顔で力強くうなづいた。
本格的にアフターよ!これは前回はアフターしなかったけど今回はアフターしたって何か意味はあるのかしら?
ホストによって違う!アフターの考え方
◆ アフターをしないホスト
まれに基本、アフターをしないと決めているホストも存在します。
同伴には同伴バックと言うわかりやすい金銭や、ホストとしての明らかな得が発生しますがアフターはそうではありません。そう考えるとしない考えも理解できますね。
◆ その日一番お金を使ってくれたお客様とアフター
一番多いのは、その日のお店での使用金額が一番多いお客様とアフターするホストなのではないでしょうか。その日の感謝の気持ちを形にする為にそうする人が多いようです。
◆ 先輩や後輩の付き添いアフター
これもたまにあるのが先輩や後輩のアフターに付き添うと言う行為。こう見ると本当にお店の外でも働かなきゃいけない事がたくさんあるんだなと思いますね。
次回予告
始めてのアフターでケンくんから勇気をもらった翔子。
マリくんとのビーガン料理デートで予期せぬ出来事が…。