- あらすじ
- 主人公のキラキラOL・高見翔子は最近出会った外コン勤務、巻 マリ男に恋をしている。
でも翔子は自他ともに認める「恋愛依存症」男性への痛い行動で付き合っても長く続かない。
友人のみちかの勧めで歌舞伎町のホストクラブに始めて行った翔子。
そこで出会ったホスト「ケン」にマリくんとの恋仲を相談している。忙しいケンくんに対して翔子の恋愛体質が爆発し、始めての喧嘩をした二人。
謝ろうと決めてお店に出向いた翔子に、ケンくんは真っ先に謝罪の言葉を告げた。
今まで自分の恋愛の重さから失敗ばかりしてきた翔子は自分の行いで人に迷惑をかけた申し訳なさから涙する。
そんな中、翔子は始めてマリくんにしたデートの誘いにOKの返事をもらいデートをする事に。
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◆これまでのお話はこちら→【第1話】はじめてのホストクラブ物語
◆これまでのお話はこちら→【第2話】ホストクラブ行き方編
◆これまでのお話はこちら→【第3話】歌舞伎町ホストクラブ初回編
◆これまでのお話はこちら→【第4話】ホストクラブで初指名編
◆これまでのお話はこちら→【第5話】ホストクラブ初めてのシャンパン編
◆これまでのお話はこちら→【第6話】初めての同伴編
◆これまでのお話はこちら→【第7話】初めてのケンカ編
◆これまでのお話はこちら→【第8話】仲直りシャンパンと初めてのアフター編
第9話「シャンパンタワーと姫様」
いつもの銀座三越前で待ち合わせ。
少し早めに退社して銀座の美容室に行って、今一番モテそうな女の髪型にしてもらってきた。
自慢のサラサラの髪の毛と巻髪に今日の私もやっぱりかわいい。
ここ最近、すっかり銀座に来る回数が減りその分、歌舞伎町に行く回数が増えたなと感じる。
ここ数か月で私の生活はぐっと変わった。
いつの間にか、ケンくんという私の日常ができたからだろう。
もうすでにケンくんに出会う前の生活を思い出す事すら難しい状態になっている事に驚く。
見慣れたはずの三越のライオンちゃんすら新鮮に感じる。
マリくんは時間ぴったりにやってきた。
遠くから見ても目立つ、シュッとしたスタイルとスーツを着て生まれてきたのではないかと思うほどしっかりと合っているスーツ。
本当に今日も非の打ちどころがない人だ。
でも、その非の打ちどころのなさはケンくんだって負けていない気がする…。
なんて心の中で、ついケンくんの事を考えてしまう様になったのもここ最近の日常となった。
ビーガン料理店では、お店の中でも一段と雰囲気のいい一番奥の席に通された。
雰囲気の良さと、マリくんのカッコ良さにそわそわしてしまう。
いつの間にかマリくんと居るよりもケンくんと居る方がリラックスできる自分が居ることに気が付いた。
自分の中に棲みついているケンくんを今日マリくんに会って改めて感じた。
「最近なんか良い事でもあった?一段とかわいくなった気がする。」
一通りコースを終えて、食後のお酒を頼もうとメニューを見ている私の顔をマリくんが覗き込みながら聞いてきた。
「え?どうしたの急に?何にもないよ?」
急にそんな事を言われてドキドキして私は目線をメニューに落としごまかした。
「翔子さ…俺と付き合ってくれない?」
マリくんの言葉に耳を疑って思わず顔を上げた。
「え?……今なんて言った?」
驚きすぎて、きっととんでもなくアホみたいな顔をしていただろう。
でもマリくんは、そのはっきりした顔立ちで真剣な眼差しを私の方にをしっかりと向けていた。
今まで喉から手が出るほど欲しかった言葉。
でも、何か違う…
どうしていいか分からなくなってしまった私は、自分の手元に目線を落とした。
その自分の手を見つめながらケンくんを思い出していた。
「俺の事思い出してよ」
そのケンくんの言葉が胸の中を反復していた。
「ありがとう、マリくん…でもね。」
意を決するために、力をいれてグッと一瞬目を瞑った。
相変わらずマリくんはしっかりと私を見つめてくれていた。
「ごめん…ちょっと考えてもいい?」
一生懸命に絞りだした言葉で、最後の方は声が震えていた。
言ってからも、怖すぎてマリくんを見る事ができず目線はずっと手元にあったままだった。
きちんと私の気持ちを伝えるのも大切な事だとケンくんが教えてくれたから。
今簡単な気持ちで良いと言えない自分の気持ちを大切にしなくては…。
「分かった…待つよ。」
マリくんの声が聞こえて私はようやく顔を上げた。
「ありがとう。本当に嬉しいけど…きちんと考えたいんだ。」
帰りのタクシーで、私はシートに身をゆだねながら自分のしてしまった事を思い出していた。
どうしてすぐにOKをしなかったのだろうか。
本当は分かっていた。
マリくんは私が思っている程いい男ではない。
そして、足もくさい。
マリくんの欠点をあえて見ようとせず盲目になり私はマリくんを追いかけていたのだ。
でもそれが変わった…ケンくんと出会ってから。
ケンくんは私の事をしっかり考え、私の気持ちをきちんと聞いてくれた。
そして私に自分の気持ちをきちんと伝える強さをくれた。
でも、私はマリくんの事が大好きだ。
だからこそ不安な気持ちはあっても今回の告白を断りたくない。
どうすればいいのか…。
家に着いてもその事で頭がいっぱいだった。
冷蔵庫の中に入っていた冷えたミネラルウォーターが、ほろ酔いの体に染みわたる。
いろいろ考えていて、やっぱりケンくんと話がしたくなった。
『ケンくん、マリくんに告白された!いろいろ話したいから明日会いに行ってもいい?』
そうケンくんにラインしたら、すぐに返信がきた。
『まじで?やったじゃん!話は聞きたいんだけど…明日、イベントなんだよね大丈夫?』
そういえばお店のトイレにそんなイベント告知が貼ってあったような。
別に改めて他の日でもよかったのだが、もう明日ケンくんに会える頭になっていた自分の気持ちを抑える事ができなかった。
まぁホストクラブのイベントがどんなものなのかも気になるし…
私は明日お店に行くことに決めた。
ちょっと!まさかのプロポーズよ!そしてホストクラブのイベント!これって何なの?どんな事をやるの?
ホストクラブの主なイベント
イベント | イベント内容 |
---|---|
周年 | お店の誕生日祝いイベント。お店の中で一番大きいと言っても過言ではない。 |
バースデーイベント | ホスト個人の誕生日のお祝いイベント。タワーをやったり、オリシャンを作ったり個人の趣向によるので内容は様々である。 |
昇格祭 | ホスト個人の役職が上がった時に行うイベント。一人だけでなく何人か合同で行う事も多い。 |
入店祭 | お店の入店をお祝いしたイベント。新人ホストが始めて行うイベントとなる。 |
季節イベント (クリスマス、バレンタインなど) |
その季節に合わせたイベント。だいたいどこの店舗も同様に行う事が多い。 |
お客様感謝DAY (還元系) |
お客様に感謝の気持ちをこめてお客様にサービスをする日。値段が安くなったりサービス品が付いてきたり内容は様々。 |
お店に入った瞬間に、いつもよりお店がにぎわっているのを感じた。
今日はお店でも人気のナンバーホストのバースデーだから混んでいる覚悟はしてきたが、入口からこんなにも雰囲気が違うものなのか。
「うわー!」
席に案内される途中に、とても大きなシャンパンタワーがあり思わず声をあげてしまった。
それは、テレビで見たりイメージしたりする何倍も大きいシャンパンタワーだった。
通されたテーブルも普段の1席のテーブルを半分にした小さなスペースになっていた。
どうやら本日主役のホストは予想以上に人気のようだ。
それにしてもシャンパンタワーすごいな。
改めてその煌びやかさに見とれているとケンくんがやってきた。
「あれ、髪型変えた?すごくいいよ!かわいい。」
やはりケンくんはめざとい。
そういえば髪型の事、マリくんは何にも言ってくれなかったな…
「あのねケンくん、私マリくんに告白されたの!どうしよう」
私はケンくんをすがる様な眼差しで見つめた。
ケンくんはそんな私に驚いた表情を見せた。
「どうしようって、付き合うべきだよ。なんで悩んでるの?」
「うーん、本当にマリくんと付き合って幸せになれるのかなって本当に悩んでるんだ。変だよね…あんなに夢見ていた事なのに、いざ叶うと思うと怖くなっちゃう」
ケンくんは遠くを見ながら話出した。
「幸せになるかどうかは誰と付き合っても分からないから。だから、きちんと翔子ちゃんの気持ちを考えて自分に正直になるべきだと思う。自分の選んだ選択に自信が持てるように。」
確かにその通りだと思った。
誰と付き合えば幸せになれますって確約は誰もしてくれない。
だからこそ、この決断をするのは自分以外何者でもないのだ。
「ありがとう…そうだね!やっぱりケンくんの言葉はすごいね!魔法使いみたいだよ!」
「よかったー!翔子ちゃんが笑ってくれたから安心したー」
そう言いながら握ってくれた手は今日もとっても温かかった。
まもなくシャンパンタワーが始まるらしい。
初めてのシャンパンタワーに私は興味深々だ。
運の良い事に私の席からはシャンパンタワーが見える。
どんなものなのだろうと私もわくわくしていた。
お店が暗転してシャンパンタワーにのみスポットがあたる状態になった。
そこにシャンパンを注ぐために主役のホストと姫様がタワーの後ろに立った。
二人ともなんと嬉しそうな顔をしているのだろうか。
ホスト側が嬉しそうにしているのは理解できるが、姫様の方も本当に嬉しそうに笑顔を見せ、顔を見合わせ笑っている。
こんなに幸せに溢れた世界が広がって居る事に私はびっくりした。
先日私がしてもらったシャンパンコールの比ではない程の盛り上がりと長いシャンパンコール。
みんなで一緒に楽しんでいるのが声を聞くだけでも伝わってくる。
シャンパンタワーは主役のホストと姫様と、他のホスト達がシャンパンを注ぎ終えるとすっかり色も変わっていた。
私の席までシャンパンの香が漂ってきて、それだけで酔っぱらえそうだ。
姫様と担当ホストがマイクでコメントを話している。
「泣きたい事もたくさんあったしケンカする事もあったけど、このタワーができてよかった。」
と姫様は少し涙ぐみながら話していた。
こんなに楽しそうに笑っているのに辛かったり、ケンカした事があったのか…
もしかしたらそんな事があったから今こんなに笑えるのかもしれない。
すごいな。私は今まで涙ぐむほど嬉しい出来事なんてあっただろうか?
そこまでして成しえた事が何かあっただろうか?
私はぶつかりたくも傷つきたくもなくて、みんなと同じように無難に過ごしてきた。
洋服も髪型も自分の趣味は二の次で男の子に好かれる為のものを探して…
たった一人の誰かに好かれたいと思って頑張った事は今回のマリくんが初めてだった。
そして、私をそうさせてくれたのは他でもないケンくんだった。
きちんとしなくてはいけない…
そう思いながら私はマリくんにラインを打った。
『昨日の返事がしたいんだけど空いてる日ある?』
種類も大きさも様々なんです。
これは2020年の1月に僕がしたタワーになります。金額はシャンパンタワーに注ぐお酒によって異なりますが、サイズが大きい事も重なってかなり高額なシャンパンタワーになっています。シャンパンの値段が様々なのは前回お伝えしましたよね?なのでシャンパンタワーに流すシャンパンの値段を変えるだけで価格が変わってきます。
次回予告
次回、最終回!
念願のマリくんからのプロポースを受けた翔子。
果たして翔子の出した結論は…?