- あらすじ
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主人公のキラキラOL・高見翔子は最近出会った外コン勤務、巻 マリ男に恋をしている。
でも翔子は自他ともに認める「恋愛依存症」男性への痛い行動で付き合っても長く続かない。友人のみちかの勧めで歌舞伎町のホストクラブに始めて行った翔子。
そこで出会ったホスト「ケン」にマリくんとの恋仲を相談している。
誕生日当日にマリくんと会いたいと伝えたが断られた翔子。
ついどこか、ケンくんと比較して優しくないマリくんに嫌気がさしてきた翔子はマリくんを冷たく突き放す。
だが誕生日当日にケンくんがお店で盛大に誕生日をお祝いしてくれ、今までにないほどの楽しい誕生日を過ごす事ができた。
そんな中、誕生日の約束を断ったはずのマリくんから改めてお祝いをしたいと連絡がきた。
◆詳しい人物紹介の記事はコチラ→どうしたグルダン?!【新連載告知】
◆これまでのお話はこちら→【第1話】はじめてのホストクラブ物語
◆これまでのお話はこちら→【第2話】ホストクラブ行き方編
◆これまでのお話はこちら→【第3話】歌舞伎町ホストクラブ初回編
◆これまでのお話はこちら→【第4話】ホストクラブで初指名編
◆これまでのお話はこちら→【第5話】ホストクラブ初めてのシャンパン編
◆これまでのお話はこちら→【第6話】初めての同伴編
第7話「初めてのケンカ」
私の誕生日という事もあってか、私が前に行きたいと言ってくれていたレストランを予約してくれていた。やっぱりマリくんは抜かりがない。
そして今日は一段とマリくんがかっこいい。
浅黒い肌に、真っ白な歯、そして自信満々の笑顔…
マリくんの足が臭いのすら私の好みのタイプでしかない。
マリくんしか勝たん。いや、そもそも他と比べる気にならん。
浅黒い肌に、真っ白な歯で自信満々の笑顔って想像つきますけどなんか嫌です!もっと応援したくなる様な描写になりませんか?
やっぱりこの人とのデートは心踊る。
踊っていたのは心だけでもなく、もはや私は軽いステップを踏んでいたと思う。
飲んでいたワインを白から赤に変えて、すぐの頃にマリくんが話し出した。
「この前は…ちょっと俺ムキになってたよね。翔子の大切な誕生日の事だったのに配慮に欠けてた。ごめんね。」
何を今さら…。
もう誕生日を楽しく過ごせた私からすると、どうでもいい話題と化していた。
私からの「大丈夫だよ」と言う言葉を待っていたのも透けて見えていたが、素直にそう答える気持ちにはなれず、運ばれてきたばかりの赤ワインを口に運んだ。
恐らく、次にくるメインのお肉に合わせての濃厚なフルボディの赤ワイン。
やっぱりマリくんはワインのセンスもいい。
やっぱり、マリくんしか勝たん。
私が何も答えないでいるのでマリくんが続けた。
「本当は、お祝いしてあげたいと思っていたんだよ。誕生日なのに寂しい思いさせちゃったよね、ごめん。」
「ううん。マリくんの言う事間違ってなかったよ。大切だと思う人と過ごしたら、とってもいい誕生日過ごせた。それより、この赤ワインおいしいよ。やっぱりマリくんセンスがいいね。これどこ産?」
「え…?あ、これはチリだったかな?」
自分しか勝たん!だと思っていたマリくんは、自分以外の”大切な人”の存在が予想外だったのか明らかに戸惑っているのが目に見えた。
ほら、自分だけだと思ったら痛い目みるんだから。
お店を出る時にマリくんはそっと私の肩に手を回してきた。
「今日はもっとゆっくり飲みたいな。もう一軒行かない?」
私は、もちろんその誘いに快諾をした。
この浮き足立った思いが悟られまいと必死にこらえながら。
二軒目でマリくんは最近会社であった部署の送別会の話をしてくれた。
特に盛り上がりのない話であったが、その時にマリくんが見せてくれた写真に見た事のある顔があった。
あのサマンサ(ベガ)女だ。
どうやら同じ部署の人らしい…こんな小さい写真ですら見たらイライラする。
私は、今ここで探りをいれてみようと決めた。
「この人…かわいらしい顔してるね!マリくん好きそう!」
そう言うとマリくんは写真の小さく写っている顔をアップにしながら
「田中さんかなー同期だよ。そんなかわいくはないけどね…」
と答えた…。
できればマリくんのインスタで検索する為に下の名前も聞き出したい
「あれ?田中さんって下の名前ユカとかじゃない?」
「ユカ?じゃないな…マユミだった気がする。」
「あーじゃあ勘違いだ!友達に似てたから!」
“タナカマユミ”ここまで聞き出せば情報は十分だ。
思いの外、うまく聞き出せて探偵になれるかもしれないと、ついほくそ笑んでしまった。
その日の帰り道、私はマリくんのインスタで“タナカマユミ”を探した。
かなりいるマリくんの友人の中から「MAYU」と名前が書いてある女の子を見つけた。
写真からしても“タナカマユミ”なのは間違いない…
幸いにもMAYUのインスタに鍵はついていなかった。
まぁ鍵を付けるような内容の投稿もなかったけど。
あまり更新していないタナカマユミの最新の投稿は男女6人くらいで送別会の送別品を買いに行った話になっていた。
その6人の中に…マリくんも居た。
日付は、マリくんとその女を会社の前で見た日だ。
そして格好も、マリくんの会社の前で見たタナカマユミと同じ格好をしていた。
あれ…?私の怒りはなんだったのだろう。
もしかしたらマリくんとタナカマユミは本当にただの同期なのかもしれない…。
自分の心配はただの取り越し苦労なのかもと思えた。
そんな悶々とした気持ちでいるとケンくんに話したくなった。
でも昨日の今日だ、さすがに行けない。
ケンくんから来てって誘ってもらえたら気持ちも違うのにな…
そうしたら今日も行く理由がケンくんのせいになるのに。
なんでマリくんと上手くいっているのにこんな気持ちなるんだろう。
昨日の素晴らしいお誕生日祝いをしてもらってから、自分の中でケンくんの存在が一段と大きくなってきている事に気が付いた。
私は、すっかり朝にマリくんに連絡をする生活リズムに戻っていた。
もちろんマリくんと一緒にケンくんにもおはようラインを送るのは私の日課だ。
そして、いつもマリくんよりも先にケンくんから返事が来る。
マリくんからは連絡が早くて、昼ごろなのがお決まりだ。
だがその日はケンくんよりもマリくんの方が返事が早かった。
どうしたのだろう…。
私は気になってお昼休みにケンくんに電話をした。
残念ながら電話は誰も出る事がなかった。
その後も何度か電話を鳴らしたが結果はどれも同じだった。
ケンくんから連絡が来たのはもう定時近くの夕方頃だった。
いつでも連絡してと言ったくせに。
その日は仕事中はもちろん、家でもずっとケンくんの事ばかり考えていた。
分かってる、私は太客ではない。
その割にケンくんには十分良くしてもらえている。
でもこうなってしまうと、高まった気持ちになっていた私がバカバカしい。
ここ数日で泡のごとくむくむくと発生してきた不思議な気持ちは、もしかしたら”依存”というものなのかもしれない。
ホストクラブに通っている人たちはみんな、こんな気持ちなのだろうか?
どうやってこの気持ちと戦っているのだろうか?
今まで男の人にモテる為にいろいろ頑張ってきた。
そして自分で言うのはなんだけど、モテてきた人生だと思う。
でも恋愛に夢中になりすぎる私は、男という生き物をモテの対象でしか考えていなかったのかもしれない。
でもケンくんとの関係はモテとは何かが違う気がする。
なんだかいろいろ気持ちが止められなくなって、ケンくんと直接話をしたくなった私は今日ケンくんに会い行こうと決めた。
でももう時間がかなり遅い。
今から行ってお店につくのは23時近くになってしまうだろう…。
でもそんなの構わない、この気持ちは収まらない。
今まではきちんと連絡して来ていたけど、今日初めて急にお店に来てみた。
またここに戻ってくるんです。ホストだって人間です…連絡ができない時だってあります。連絡がないから翔子さんの事を嫌いになったとか、そんな事で急に連絡こなくなったりしません!
僕ひどい時は携帯画面見るだけでゲロ吐いてました…だから連絡はお客様の好き嫌いには直結しません!
いきなりの私の襲来にさすがに驚いた表情をしたケンくん。
「思いもよらず翔子ちゃんの顔が見られて嬉しいよ。」
相変わらずのかわいい笑顔がずるい。
だが顔が見られて嬉しいという割に、今日は一段と私の隣に居る時間が短い。
それは容易に想像できる。
きっと他のテーブルに居る被りのお客様が多いからだと思う。
何度か通いホストクラブはそういうものだというのは学んだ。
被りのお客様
同じホストを指名しているお客様の事。被り卓と言ったりもする。
他にお客様が居たら、ケンくんが私の横に居る時間は必然的に短くなるものだ。
でも今日はそのケンくんの行動も私をイラだたせる。
私は、かっこよくもないし話も楽しくないモブくんと話したくて来たわけではない。
閉店時間が近づいてきた時に、かなり久しぶりにケンくんが私の隣に戻ってきた。
「お待たせー!で、翔子ちゃんは今日は何かあったの?電話もくれてたね?仕事中かなと思ってかけ直さないでいたんだよね」
なんでそんなのんきな質問をしてくるんだろうか。
「なんでじゃないよ!なかなか返信もくれなかったから…心配して電話までしたんだよ。」
私はついケンくんに、まくし立てる様に話てしまった。
「ごめん、昨日後輩の悩み相談受けてて朝までバーで飲んでたから、今日はかなりひどい二日酔いになっちゃってたんだ。翔子ちゃんがそんな風に心配してくれると思ってなかった。」
そう言って私をなだめる様に話してくれた。
だが私の一度入ったスイッチは止まらず、次第に怒りの矛先は今日連絡がなかったで原因となったその後輩までに及んでいった。
「そんなの知らないし、なんでケンくんが相談聞かなくちゃいけないの?毎日朝に連絡して返すって生活してたんだから、今日も私が朝連絡するの考えれば分かるよね?なんで?私がお金も使わないし関係ないと思った?」
「俺にとっては後輩の話を聞くのも仕事なんだよ?大切なスタッフは悩みを聞いてあげたいし。それに使ってる金額は…それも俺にとっては仕事だし、多少は理解してもらいたいな。」
大切…?そうか後輩は私よりも大切な存在なのか。
きっと他のお客様は、私よりも大切なのだろう。
一度怒りのスイッチが入ってしまうと、膨れ上がった気持ちは止められなかった。
「そうだね、今日のお客様だって私より大切だから私の所に居てくれる時間が短いんでしょ?ごめんね、細客は細客らしく静かにしてればいいね。」
「そんな事ないよ!でも今日みたいに急に来た時は、どうしても接客時間が短くなっちゃうんだよ。普段はお客様との兼ね合いとかも考えてるから。今度埋め合わせするから」
ケンくんはそう言って、この争いを収めようとした。
「じゃあ今日穴埋めしてよ。これからアフターして。」
私はさっきモブくんがしていた昨日のアフターの話を聞いて、アフターという存在を先ほど知った。
このままでは私の気持ちが収まらない。
アフター
ホストクラブの営業終了後に女の子とホストが会う事。
「ごめん、今日はアフターできないよ。」
ケンくんから出た言葉は予想はしていたが、自分の予想よりも受けるショックは大きかった。
「なんで?そんなに私の事が嫌なの?それとも今日も私より大切な人と約束があるの?」
私は自分の惨めさに、溢れだしそうになる涙をこらえるのに必死だった。
「そんな事ないよ、落ち着いて。今日の翔子ちゃん、なんか怖いよ。」
そう冷静になだめられると、ますます自分が惨めに思えてくる。
もうここに居ることが辛くなった。
「もういい。お会計ちょうだい。」
そう言ってお会計を済ますと、私はケンくんがまた席を外したタイミングで席を立った。
「待って翔子ちゃん!今ケンさん来るから…。」
必死に止めるモブくんを振り払らう様にして私は足早にお店を後にした。
- ◆ホストあるある
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来店の予定がなくお客様に連絡しっまくった日に限って全員来て卓被りすぎに。
調子良い時って重なるんだよね。
次回予告
ケンくんと喧嘩をしていまった翔子。
全てのやる気をなくし仕事も休む始末。
そんな翔子を元気づけるのは結局マリくんであるのだ。